美しき细胞内输送
タンパク质の优雅で、
どこか诗的とも言える动きを目にしたとき、
もっと知りたいという
深い好奇心が涌き上がってきたのです。
细胞内输送の研究を
始めたきっかけは何ですか。
もともとは、アルツハイマー病をはじめとする人間の疾患に興味がありました。研究を進めるうちに、この病気と密接に関わっている「アミロイド前駆体タンパク質(APP)」の存在を知りました。私が心奪われたのは、このAPPが神経細胞の中を輸送されているという事実です。このように移動するタンパク質は決して一般的ではありません。顕微鏡を通してその動きを観察したとき、そのプロセスの美しさに衝撃を受けました。それがきっかけで、タンパク質が細胞内でどのように動き、その輸送がどのように制御されているのかに興味を抱くようになりました。その後、モータータンパク質をより深く探究できる研究室を選んで海外留学に行くことを決意しました。カリフォルニア大学デービス校(UC Davis)では、モータータンパク質を詳細に解析するための刺激的な新技術を学びました。
モータータンパク质のトラブルは、
私たちの日常の健康に
どう影响するのでしょうか。
モータータンパク质は、ミトコンドリアやシナプス小胞など、神経细胞の机能に欠かせない多くの重要な构成要素を细胞内で运んでいます。もしモータータンパク质が适切に机能しなければ、细胞内输送が破绽し、それがアルツハイマー病や认知症、础尝厂(筋萎缩性侧索硬化症)といった神経変性疾患の病态や进行に深く関わっていると考えられています。细胞が正常に机能するためには正确な输送システムが必要不可欠であり、このシステムが乱れると、私たちの健康に深刻な影响を及ぼします。
その输送システムについて、
もう少し详しく教えてください。
例えば础笔笔は、「キネシン」というモータータンパク质によって运ばれます。キネシンは础笔笔を掴み、细胞内の构造体に沿って运びます。キネシンには2本の「脚」があり、微小管というレールの上を一歩ずつ歩くように进みます。础笔笔が小さな光の粒となって运ばれていく様子をはじめて顕微镜で见たとき、その优雅で诗的な动きに魅了され、もっと知りたいという强い好奇心が芽生えました。それが、研究対象をアルツハイマー病そのものから输送システムへと移した理由です。モータータンパク质は、街中に何百もの荷物を届ける配达员のような存在です。集积所へ行って荷物を积み込み、目的地へと运んでいきます。
それは兴味深いですね。
では、キネシンは常に细胞内を
动き回っているのですか?
実は、そうではありません。通常、私たちの細胞内にあるキネシンの大部分は「自己抑制」された状態にあります。勝手に動き出さないよう、いわば「ブレーキ」がかかっているのです。駅で乗客を待つタクシー運転手のように、キネシンは輸送が必要な荷物が現れるのをじっと待っています。この「ブレーキがかかった状態」を維持することは、健康な细胞内输送にとって極めて重要です。 一部の疾患では、このブレーキが効かなくなってしまうことがあります。常に活動し続けると過剰な輸送を行い、最終的には神経系にダメージを与えてしまうのです。これは私の研究における主要な発見の一つです。これまでは、疾患に関連する変異は「モータータンパク質の活動低下」に結びつけられることが一般的でした。しかし私の発見は、活動が増加することもまた有害であり、モータータンパク質の働きすぎを招くことを明らかにしました。「働きすぎ」は必ずしもポジティブなことではありません。
Image courtesy of Tohoku University and Studio Xxingham
Image courtesy of Tohoku University and Studio Xxingham
健康なキネシンは细胞システムに
不可欠なのですね。
他に役割はありますか?
キネシンは、细胞核を所定の位置に留め、固定するためにも极めて重要です。キネシンがなければ核は本来の位置から流されてしまい、细胞の正常な机能に支障をきたします。核の位置は、细胞の働きや组织の构成と密接に関係しています。
核がずれてしまうと、细胞分裂や细胞の移动が妨げられたり、筋肉や神経といった専门的な细胞への适切な分化が阻害されたりします。长い时间をかけてこのずれが蓄积すると、个体全体の构造や健康が损なわれる可能性があります。
どのようにして
このプロセスを観察しているのですか。
UC Davisにいた頃に「一分子観察法(single-molecule imaging)」という技術を学び、現在の研究にも応用しています。この技術を用いると、微小管の上を動く個々のモータータンパク質を直接観察することができます。この実験系では、他の細胞成分からの干渉を受けることなく、モータータンパク質と微小管だけを存在させることができます。これは非常に重要で、モータータンパク質の挙動の変化(ブレーキ機構の故障など)が、タンパク質そのものに起因する固有の性質なのかを明確に判断できるからです。この技術がなければ、疾患時におけるモータータンパク質の挙動について確かな結論を出すことは難しいでしょう。極めて純粋な実験システムと言えます。
贵搁滨厂は学际的な环境で知られていますが、
学际研究を行う上での课题は何ですか。
共同研究を行う多くの研究者は、自分の研究を分かりやすく説明することに长けています。しかし、真にインパクトのある学际研究を遂行するためには、お互いの研究を表面的な理解で终わらせないようにすることです。同僚の研究の背后にある根本的なメカニズムを真に把握する必要がありますが、それは决して容易なことではありません。特に、时间の制约がある中ではなおさらです。
挫折や実験の失败に直面したとき、
何がモチベーションになりますか。
ときには「离れてみること」が最善のアプローチになることがあります。行き詰まったときは、休憩を取ったり家に帰ったりして、别の日に実験に戻るようにしています。一度离れることでリセットでき、より明快な视点が得られることが多いのです。研究は困难と挫折の连続です。研究を志す皆さんへの私のアドバイスはシンプルです。「諦めないこと」。たとえ状况が厳しくても、実験が失败しても、忍耐强く続けることが不可欠です。
休日はどのように过ごしていますか?
自由な时间にはランニングや散歩を楽しんでいます。头をリフレッシュさせ、実験室から离れ、研究に戻ったときに再び集中力を高めることができています。
写真:実験室で生体试料の保存に日常的に使用される必须ツール、マイクロチューブが詰まったバッグ。
千葉 杏子
东北大学学際科学フロンティア研究所 助教。専門は生化学および细胞内输送です。細胞内で荷物を運ぶ重要な生体分子機械である「モータータンパク質」を制御する分子メカニズムを中心に研究を行っています。
具体的には、不必要なエネルギー消费を抑えるために通常は停止している「ブレーキ状态(自己抑制状态)」に着目し、モータータンパク质がどのように活性化され、カーゴと结合するのかを研究しています。一分子観察法を用い、个々のタンパク质分子の挙动を直接可视化することで、カーゴの结合がどのようにモーターの活性化を引き起こすのかを解明しています。モータータンパク质の遗伝子変异は神経変性疾患などの人间が抱える疾患と密接に関连しているため、细胞内输送の异常がどのように病态に関与するかを明らかにし、将来的な治疗戦略の构筑に寄与することを目指しています。

Translation: Waka Kuchimachi
Romance
of
Research