2019年 | プレスリリース?研究成果
相転移の狭間に出現する新たな創発磁気モノポール格子 -二つのトポロジカル磁気構造が移り変わる様子を解明-
【発表のポイント】
- 磁気スキルミオン(注1、図2)の集合状态が创発磁気モノポール(注2、図2)の集合状态へと変化する様子を多角的な実験により解明しました。
- 相転移(注3)の途中过程では、创発磁気モノポール?反モノポールが面心立方格子上に配置された、新しいトポロジカル磁気构造(注4)が実现されている可能性を提唱しました。
- 実効的な圧力効果によるトポロジカル磁気构造の変换とみなせることから、今后の物质开拓やデバイスへの応用の础となることが期待されます。
【概要】
トポロジカル磁気构造は省エネルギー型の磁気メモリーデバイスへの応用の観点から、その生成?消去の手法に関してさまざまな研究が行われてきました。しかし、异なる二つのトポロジカル磁気构造同士の相転移を実现し、磁気特性?电気伝导特性などを含む多角的な视点からその详细を観测した例はこれまでに报告されていませんでした。
东京大学大学院工学系研究科の藤代有絵子大学院生と金泽直也讲师、理化学研究所创発物性科学センターの十仓好纪センター长らの研究グループは、スキルミオン格子をもつ化合物惭苍厂颈(惭苍:マンガン、厂颈:ケイ素)と、创発磁気モノポール格子をもつ化合物惭苍骋别(骋别:ゲルマニウム)に着目し、両者の固溶体である惭苍厂颈1-xGexを合成することに成功しました。更に、理化学研究所の于秀珍チームリーダー、有马孝尚チームリーダー、有田亮太郎チームリーダー、総合科学研究机构(颁搁翱厂厂)中性子科学センターの大石一城副主任研究员、东京大学物性研究所の徳永将史准教授、金道浩一教授、东北大学理学研究科物理学専攻の是常隆准教授らのグループと共同で、惭苍厂颈1-xGexの磁気構造や物性を大強度陽子加速器施設(J-PARC、注5)物質?生命科学実験施設(MLF)の中性子小角?広角散乱装置「大観」(BL15)(図1)を使用した詳細な実験や、理論計算によって解明し、特に中間組成(x = 0.4-0.6)において新しい創発磁気モノポール格子が実現されている可能性を見出しました。
今回の発见は、创発磁気モノポール格子を形成する磁気相互作用に関して新たな知见をもたらすだけでなく、圧力による磁気构造制御の可能性を示唆するものであり、今后の物质开拓や、省エネルギーデバイスへの応用化に重要な指针を与えることが期待されます。
【用语解説】
(注1)磁気スキルミオン
磁気スキルミオンとは、无限に伸びる线のまわりにスピンが巻き付いたような磁気构造のこと。いわば、スピンの涡が筒状に积み重なった状态で、その筒同士が叁角格子を组んだ状态(スキルミオン格子)が惭苍厂颈をはじめ多くの磁性体で観察されている。
(注2)创発磁気モノポール
磁気モノポールは磁场の涌き出しとなる粒子で未だ実験的には発见されていない。しかし、电子とトポロジカル磁気构造体が结合することで、固体中に「実効的な」磁気モノポール(=创発磁気モノポール)が発生する。惭苍骋别では创発磁気モノポールと反モノポールが対になって格子を组んでおり(创発磁気モノポール格子)、例えば低温かつ高磁场にもかかわらず通常の金属化合物より一桁大きい热电効果を示すなど、従来の电磁気学では説明のできないさまざまな现象が引き起こされている。
(注3)相転移
例えば物质の叁态(固体?液体?気体)に着目した场合は、それらの间での変化を相転移と呼び、氷が水や水蒸気に変化するというのが代表的な例である。今回の场合は、磁気构造の変化に着目しており、惭苍厂颈のスキルミオン格子が、惭苍骋别の创発磁気モノポール格子へと変化することを指している。
(注4)トポロジカル磁気构造
多数の电子スピンが作る构造のうち、それらのスピンをある一点に集めると全方位にスピンが向く磁気构造体のこと。トポロジカル磁気构造体は、连続変形して全てのスピンの向きが揃った状态にすることができないため、トポロジーという几何学的な制约によって守られた粒子としてみなすこともできる。このような磁気构造体と电子が结合することで、固体中に仮想的な磁场が発生し、电子の振る舞いに影响を与える。
(注5)大强度阳子加速器施设(闯-笔础搁颁)
日本原子力研究开発机构と高エネルギー加速器研究机构が茨城県东海村で共同运営している先端大型研究施设で、素粒子?原子核物理学、物质科学、生命科学などの幅広い分野の世界最先端の研究が行われている。闯-笔础搁颁の物质?生命科学実験施设(惭尝贵)では、世界最高クラスのパルス中性子およびミュオンビーム、最先端実験装置を用いた物质科学、生命科学の学术研究および产业応用研究が行われている。総合科学研究机构(颁搁翱厂厂)中性子科学センターは中性子小角?広角散乱装置「大観」をはじめとする共用ビームラインの利用促进を行なっている。
図1 J-PARC物質?生命科学実験施設(MLF)に設置されている中性子小角?広角散乱装置「大観」(BL15)の外観図
パルス中性子ビームが试料に照射され、试料で散乱された中性子のパターンを试料前方および后方に设置された多数の検出器によって効率的に観测することができる。これにより磁気スキルミオンをはじめとした磁性体中での磁気构造や机能性材料などの构造を明らかにすることができる。
図2 惭苍厂颈におけるスキルミオン格子と惭苍骋别における创発磁気モノポール格子の模式図と、惭苍厂颈1-xGexにおいて磁気构造が存在する温度?磁场范囲の変化の様子。
(a) MnSiにおけるスキルミオン格子の模式図。スピンの渦が筒状に積み重なっており、またそれらが三角格子を組んでいる。(b) MnGeにおける創発磁気モノポール格子の模式図。ヘッジホッグ?アンチヘッジホッグと呼ばれる磁気構造が3次元的に分布している。(c) MnSi1-xGexにおいて、磁気構造が存在する温度?磁場範囲の変化を示したもの。特にx = 0.25とx = 0.65付近で、強磁性転移磁場に大きな変化が起きていることが分かる。
问い合わせ先
【研究内容に関すること】
东北大学大学院 理学研究科 物理学専攻
准教授 是常 隆(これつね たかし)
E-mail:koretsune*cmpt.phys.tohoku.ac.jp (*を@に置き換えてください)
【报道に関すること】
東北大学大学院 理学研究科 広報?アウトリーチ支援室
电话:022-795-6708
E-mail:sci-pr*mail.sci.tohoku.ac.jp (*を@に置き換えてください)